今回、ご登場いただくのは群馬工機株式会社の代表取締役 前原弘嗣さん。7年前、突然訪れた事業承継という大きな転機。準備が整いきらないまま社長に就任し、不安の中での船出となりましたが、多くのお客さまや仲間の支えにより、一歩ずつ前へと進んできました。今年度、伊勢崎商工会議所青年部の会長に就任。テーマにかける思いなどをお尋ねしました。
前原 弘嗣(まえはら・ひろつぐ)さん 伊勢崎市出身 伊勢崎市在住
前回、お邪魔したのは2007年。19年ぶりのご登場です。 この間での大きな変化は、社長に就任したこと。7年前、社長だったお父さまが70歳を迎えられたことをきっかけに、事業承継の話が進んでいました。そんな矢先、お父さまが他界。そのバトンは急きょ、前原さんの手に渡されることになったのです。心の準備も整わないまま、社長に就任しました。 現場での仕事は任されていたものの、当時、経営や経理については手探り状態。「何が正解かも分からない」という不安の中で、最初に頭をよぎったのはお客さまの存在でした。これまでお父さまが築き上げてきた信頼関係。その上に成り立っていた取り引きが、自分の代になっても続けてもらえるのか——。そんな思いを胸に、ごあいさつ回りに歩きました。 抱いていた不安はやがて安堵へと変わります。多くのお客さまが変わらず関係を続けてくださり、中には「若い社長になって、これからも安心が続くよ」と声をかけてくれる方もいらっしゃったそう。お父さまが築き上げてきた信頼関係は、前原さんが思うよりずっと深く、強いものだったのです。 「伊勢崎商工会議所青年部の先輩や仲間たちの存在も心強かった」と振り返ります。中には、まるで実の親のように親身になってくれた人もいらっしゃいました。その一方で、今のままでは成長はないという危機感も感じたそう。多品種小ロットという柔軟な対応力、そしてアルミニウムに特化した専門性という強み。これらを守りながらも、未来を切り開いていこうという決意が、静かに芽生えていきました。 ようやく経営の感覚をつかみ始めた頃、世界は未曾有の混乱に包まれます。コロナ禍という、誰も経験したことのない危機。先が見えない状況の中で、経営者としての判断が日々突きつけられました。 内部の改革を進めるとともに、お客さまに対しては価格交渉にも当たりました。単価を上げてもらうことでお客さまが離れていく可能性はある。それでも、このままでは会社が立ち行かなくなる。葛藤の末に選んだのは、正面から向き合うことでした。一社一社に丁寧に説明し、理解を求める。その積み重ねが信頼を生み、結果として多くのお客さまに受け入れていただけることになりました。この経験は、「逃げずに向き合えば道は開ける」という確かな手応えとなり、次の挑戦へと踏み出す原動力となっていきました。
ピンチの時支えになってくれた伊勢崎商工会議所青年部の仲間たち。前原さんは、入会して24年になります。その中でも今年の2月、伊勢崎の全国大会開催は大きな出来事でした。 前原さんは、先輩たちをもてなすOBOGサロンの部会長を務めました。サロンのコンセプトは情熱×再会。久しぶりにやってくる先輩方にとって「OBOGサロン」は同窓会のようなもの。再会をゆっくりと楽しめる場を、情熱を持って作り上げたいと考えました。メンバーは伊勢崎市の青年部を中心に、県内9単会から出向のスタッフも募りました。顔なじみの存在がいることで自然と心の距離が縮まり、安心感が生まれる、という心くばりからでした。 会場に選んだのは、オートレース場。伊勢崎市出身のあだち充さんの代表作「タッチ」の達也の声を担当した声優、三ツ矢雄二さんをお招きし、アフレコや伝える力についての講演をしていただきました。参加者は、見たことのないシーンに関心を寄せていました。 そして、なんとレースも開催。来場者290人だけのために「8走者が6周するガチな記念レースを企画しました」と前原さん。全国にあるオートレース場は現在6カ所。しかし、消音化が進んでいるのだそう。そんな中で伊勢崎は、消音装置をつけない爆音が特徴。なんといっても迫力が違います。エンジンが唸りを上げるたびに、空気が震えるような感覚。耳だけでなく、全身で受け止める重低音とスピード感が見る人の心を一瞬で引き込みます。さらに、実況アナウンサーが会場をアツク盛り上げました。 「楽しかった」と満面の笑みで会場を後にする先輩たちの姿を見たとき「企画や準備は大変でしたが、この一言で全て報われた気がします」と前原さん。伊勢崎ならではの魅力を最大限に生かした演出は「ここでしか味わえない体験」として先輩たちの心に残り続けるはずです。
そして今年4月、前原さんは、伊勢崎商工会議所青年部の会長に就任しました。お父さまもかつて同じ立場を務めた経験があるそう。「父を越えたい、並びたいという思いがあったので、会長になることは夢のひとつでした」と話します。親子で会長を務めるのは設立以来初のこと。お父さまが8代目、前原さんが38代目という巡り合わせにも、「特別な縁を感じずにはいられない」と静かに思いをにじませます。 今年度のテーマは「path&miracles〜軌跡の先へ、共有と共創、共に奇跡の未来へ〜」。Pathは道筋や生き方、積み重ねてきた軌跡、Miraclesには常識を超えた出来事という意味があります。先輩たちから受け継いできたつながりを礎に、その先の未来へとつなげていきたい——そんな強い意志が宿っているテーマです。 「同じことの繰り返しでは面白くない。変化は大変だけれど、その先にこそ価値がある」と話す前原さん。「今までのことを変えるということは、当然エネルギーが必要。大変なことも、失敗もあるけれど、その方が面白いじゃないですか」と前向きです。 願いは「若い世代の未来につながることをしたい」ということ。若い人たちの発想や感性を取り入れながら、人の心を動かすことで組織も地域も変わっていく——その可能性を信じ、挑戦を続けていきます。 そんな前原さんの息抜きは、旅をすることです。思い立ったら即座に旅を計画。車やバイクを走らせてどこでも出かけるそう。「夜は車中泊できるよう、大きな車に乗り換えました」と屈託なく笑います。旅で得たエネルギーを糧に、会長としての新たな挑戦に力強く向き合っていきます。
群馬工機株式会社 ◆住所/伊勢崎市下植木町951-1 ◆TEL/0270-25-7004 ◆創業/1973年 ◆営業時間/8:00〜17:00 ◆休日/土曜、日曜、祝日 ◆従業員数/7人 ◆業務内容/精密機械のアルミ加工(切削、穴開けなど)、CAD・CAMによる治具製作ほか 群馬工機株式会社 はこちら
群馬工機株式会社のHP はこちら
取材日 2026年3月
あのお店・会社のあの人を連載で御紹介します。
今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ!
アイマップでは連載企画として、「応援します商売人!今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ」と称し地域の企業人・オーナーさん達をご紹介していきます。 また次の方は、ご紹介を頂くという経営者の輪方式をとらせて頂きます(笑) この企画を通じて、少しでも地域の皆さんに地元のお店や企業、そしてそこで働く人達を知って頂ければ と思っています。またそれが僅かでも売上増やビジネスチャンスに繋がれば幸です。
※ご注意:本記事は上記の日付をもとに作成しています。実際にお店等に行く方におかれましては、事前に電話等で確認してからお出かけ下さい。記事と情報が異なる場合、imapは一切責任を負いませんのでご了承下さい。(記事と情報が異なる場合もありますので ご了承下さい。)
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