経営者の輪Vol.400 地域おこし協力隊の山田 尚輝さん

経営者の輪Vol.400 伊勢崎 地域おこし協力隊の山田尚輝さん

記念すべき400回目は、地域おこし協力隊の山田尚輝さんデス! 自由な環境でのびのびと育ち、一見すると順風満帆な青春時代を送ってきたように見える山田さん。しかし、その内面には「自分には誇れるものが何もない」という、15歳の時の深い葛藤が原点として刻まれていました。そこから始まった「自ら行動する」という生き方。学生時代の小さな挑戦、会社員としての違和感を経て、24歳の山田さんがたどり着いたのは…。

プロフィール

山田 尚輝(やまだ なおき)さん

埼玉県さいたま市出身
伊勢崎市在住

中学で知った「何もない自分」。行動することで生じた変化

白紙の調査票が突きつけた、ほろ苦い現実 

山田さんの原点は、高校受験を控えた中学3年の秋にありました。自らの調査票を書こうとしたとき、手が止まったのです。空手や水泳、バレーボールなど、さまざまな経験を積んできたものの「県大会に出たわけでも、部活で役職に就いていたわけでもなかった」という山田さん。客観的な実績という物差しを前にした瞬間、言葉を失ってしまったのです。

 

このときに感じた焦りに似た思い、ほろ苦い気づきが、山田さんを変えました。「何もしなければ、何も始まらない」。そう決意した山田さんは「自分にできること」の第一歩として選挙管理委員に立候補。その後、進学した高校では学級委員やバドミントン部副部長、文化祭実行委員など次々にチャレンジ。自ら動くことで、世界を変わる手ごたえを覚えました。

 

コロナ禍が生んだ挑戦 

当時の未来図はまだ白紙。どんな可能性も描き込めるよう、広くさまざまなことを学べる法政大学社会学部社会政策科学科へ進学しました。しかし、ときはコロナ禍。リモート授業で通学に要する時間がなくなった分、近くのカフェで勉強をしたり、珈琲館やタリーズコーヒーでアルバイトをしたり。社会の機能が一時停止するなかで、カフェは彼にとって、外の世界とつながるかけがえのない「居場所」となっていきました。

 

大学1年の終盤には、起業意識が強い友人と共にオンラインでの「受験コーチング事業」を立ち上げ。山田さん自身、塾に通わずに大学合格を果たした経験をもとに「塾に頼らずとも受験を乗り切れるサポートをしたい」という思いがありました。

 

 

 

学生時代に友人と起業、そして就職活動 

しかし、ここで最初の壁にぶつかります。ターゲットである高校生が乗り気でも、最終的な決裁権を持つのは月謝を払う「保護者」であるという事実。教育を託す存在として認めてもらうにはどうすればよいか。山田さんはそれまでのカジュアルな言葉遣いやアプローチを一新し、保護者に安心感を持ってもらえるよう改善を重ねました。こうして見事、伴走型の新しい教育スタイルを軌道に乗せたのです。この経験が、山田さんにビジネスの面白さと難しさを教えることとなりました。

 

しかし、この時はまだ起業を考えていなかった山田さん。大学3年で就職を意識し、この事業からは離れ、地方での暮らしに興味があって、前から訪れてみたかったという銀山温泉と越後湯沢でリゾートバイトを経験しました。

 

仕事をするならトラディショナルなことではなく、面白い取り組みをしているところで働きたいと思うようになりました。SaaS系IT企業への就職が決まると、内定者インターンとして法人向け安否確認サービスのセールスを経験。そのまま入社しました。

旺盛な行動力で新たな一歩踏み出す

苦手が新たなスタートのきっかけに 

1日に2~3社の担当者とZoomで向き合い、課題を解決する営業の仕事はやりがいに満ちていました。しかし、葛藤もありました。旺盛なチャレンジ精神で何でもスマートに解決しそうな山田さんですが、意外にも細かな作業が苦手なのだそう。人間的でとってもいいですねっ! 

 

そのような日々を過ごす中で、「人生の大半を占める働く時間だからこそ、若く熱意のある今、本当にやりたいことに挑戦したい」。と、ふと考えるようになりました。自分にできることは何だろう。そう考えたとき、真っ先に思い浮かんだのが『カフェ』でした。利用者として通ううちに、心地よさだけでなく改善点も自然と目に入るようになり、「自分ならこんな空間をつくりたい」という思いが芽生えていったのです。

 

地域おこし協力隊の存在に衝撃 

「2027年8月までにカフェを開業する」という目標を定め、ネットサーフィンで情報収集。そんなとき、見つけたのが「地域おこし協力隊」でした。3年間の給与が担保されながら挑戦のチャンスが与えられる。こんな良い制度があったんだ、と胸が躍りました。

 

地域おこし協力隊募集の中で目に留まったのが、空き店舗を利用したビジネスを掲げた伊勢崎市。2025年秋のことでした。

 

 

まさかの採用にワクワク 

早速応募。しかし「受かると思っていなかった」と次なる方法を探し始めていた同年12月。同僚とランチに出かけようとしたそのとき、電話が入りました。採用を告げるものでした。その瞬間を「ワクワクした」と満面の笑みで語ります。

 

実は、地域おこし協力隊の選考を受けていたことは、ご両親に告げていなかったそう。採用になったことも打ち明けないまま年が明けました

 

その後、報告を受けたご両親はビックリ! それはそうですよぉー。もともと、子どもたちを尊重してくれるご両親は、早速伊勢崎のことや、起業について調べて応援してくれる心強い味方となってくれました。

地方都市の空洞化を食い止めるビジネスモデルを伊勢崎から

暮らしやすいまち、伊勢崎で始動 

「いろいろなお店があって暮らすうえで便利そう」、伊勢崎を初めて訪れた印象は、今も変わらないと言います。今の山田さんは、駅前のインフォメーションセンターを活動拠点に、まちなかで事業をしている人に会ったり、イベントに参加したり。実行側としての熱量を体感したり、気になる店を訪れたり、読書をしたりと起業に向けての行動を重ね、目標である「2027年8月開業」を目指します。この期限は『決めないとどうせやらない』と自らに言い聞かせて設定した、現実的な最短日程なのだそうです。

 

 

目的はカフェじゃない⁉ 

カフェのオープンを目指す山田さんですが、本当の目的は別のところにあるそう。カフェじゃないんかい! という突っ込みが聞こえてきそうですが、そうではなく、もっと深いんです。

 

山田さんの中で「カフェ」は、単にコーヒーを提供する場所ではありません。本質は、人と情報が交わり、時にはお客さま同士が繋がって新しい何かが生まれ、生み出し続けることのできる「コミュニティハブ」。「カフェ」は、あくまでも手段なんですね。

 

その取り組みの先に見据えるのは、伊勢崎のまちなかの空洞化を食い止め、ビジネスを成功させる「地方活性化のモデル」を自らつくること。「伊勢崎はチャレンジの街、まちなか活性化の成功モデルだ」と言われる実績をつくり、それを全国の同じ悩みを抱える街へと展開していくことが、山田さんの真のビジョンです。

 

エスプレッソ推しのカフェ 

とはいえ、カフェそのものにも山田さんらしいこだわりを存分に盛り込みます。提供したいのは、伊勢崎ではまだ多くないエスプレッソ系。カフェラテ、カプチーノ、マキアートなどのミルク系エスプレッソに加え、地元事業者の焼き菓子など厳選したおやつも提供する予定です。

 

目指すのは「自分も、周りの人も幸せになること」。かつて「何もない」と悩んだ少年は今、伊勢崎の、全国の未来を照らす確かな光として歩み始めています。

■企業情報

伊勢崎 地域おこし協力隊

◆住所/伊勢崎市今泉町二丁目 410(伊勢崎市役所内)

◆活動開始年月/2023年4月(山田さんの活動開始年月は、2026年4月)

◆問合先/伊勢崎市産業経済部商工労働課 商工振興係

Tel 0270-27-2754 

 

取材日 2026年6月


記事内容の二次利用について

本サイト上に掲載されている写真・記事等を無断で二次使用することを禁じます。
二次利用を希望される方はこちらから必ずアイマップへお問い合せ下さい。

管理画面ログイン

特集コーナー