駄菓子屋から始まる、地域の新しい居場所。学生と地域が一緒につくる「だがしひびのば」伊勢崎店
駄菓子屋と聞くと、子どもの頃に通った懐かしいお店を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。お菓子を選ぶ楽しさはもちろん、学校の違う友達と出会ったり、お店の人とおしゃべりしたり。駄菓子屋には、買い物だけではない魅力がありました。
そんな駄菓子屋の可能性に注目し、地域の新しい居場所づくりに取り組んでいるのが「だがしひびのば」です。子どもだけでなく、学生や地域の大人など、あらゆる世代が気軽に集える場所を目指すだがしひびのば。2026年7月にオープンした伊勢崎店を訪ね、店長の船戸さんにお話を伺いました。
駄菓子屋を、地域の人がつながる場所に
だがしひびのばを運営しているのは、IT企業の「CATENASU(カテナス)」。IT企業と駄菓子屋。意外な組み合わせですが、その背景には、地域の人たちが交流できる場所をつくりたいという思いがあります。
運営のヒントになったのは、大学生が自由に集えるコミュニティスペース「GITY(ギティ)」での取り組みでした。学生が気軽に立ち寄り、誰かと話したり、相談したりできる場所。コミュニティマネージャーとしてスタッフも常駐しており、そこで生まれる「ここに来れば、あの人に会える」という安心感が、昔ながらの駄菓子屋の姿と重なったといいます。
駄菓子屋は、お菓子を買うだけの場所ではありません。子どもたちが集まり、自然と会話が生まれ、世代や学校の違いを超えて人がつながる場所でもあります。そんな駄菓子屋のよさを生かして、子どもたちの居場所づくりや地域のコミュニティ形成につなげたい。さらに、空き店舗の活用など、地域が抱える課題を解決するきっかけにもしたい。そんな思いから、だがしひびのばの取り組みが始まりました。
学生が主役!自由な発想でお店をつくる
だがしひびのばの大きな特徴は、学生たちが主体となって店舗の運営や企画に関わっていることです。学生たちは、駄菓子屋の店舗運営だけでなく、Instagramでの情報発信やイベントの企画なども担当しています。大人が決めた形に学生が合わせるのではなく、自分たちで考え、挑戦しながらお店をつくっていくのです。
伊勢崎店の船戸さんも、何にでも前向きに取り組む学生たちの姿に刺激を受けているといいます。
「学生の柔軟性や、型にはまっていない自由な発想には、こちらも学ぶことが多いです」
運営がIT企業ということは、船戸さん自身も、もともとはIT企業に就職した方。入社してから、学生のコミュニティマネージャー(世話役)を務め、さらに駄菓子屋の店長になるとは、就職するときには想像もしていなかったことでしょう。戸惑うことも多かった中、代表からかけられたのは「失敗はないから」という言葉でした。その言葉に背中を押され、新しいことに挑戦してみようと思えたといいます。もちろんそこには日々共に時間を過ごした学生たちの影響もありました。
学生たちが自由に挑戦できる環境の中で、大人もまた刺激を受け、一緒に成長していく。だがしひびのばには、そんな関係性があります。
伊勢崎店は、パン屋さんの魅力も引き継ぐお店
だがしひびのばには、決まった店舗の形がありません。それぞれの地域の事情や特色を生かしながら、お店づくりを進めています。
伊勢崎店では、廃業することになったパン屋さんと譲渡契約を結び、その店舗を活用してオープンしました。さらに、以前のパン屋さんで働いていたスタッフも引き続き雇用。これまで地域で親しまれてきたパンの味も受け継いでいます。
駄菓子屋でありながら、パンも楽しめる伊勢崎店。地域のお店が閉じてしまうことを単なる終わりにせず、新しい形で活用していく取り組みでもあります。
空き店舗を生かし、これまでのお店の魅力も引き継ぎながら、新たな人の集まる場所へと変えていく。地域にあるものを生かして居場所をつくるという、だがしひびのばらしさが感じられます。
「駄菓子屋のおばあちゃん」のような存在になりたい
店長の船戸さんが目指しているのは、どんな人でも気軽に立ち寄れる、安心感のある場所です。「私が駄菓子屋のおばあちゃん役になりたい。何かをするということではなくても、ここに行けば会える。安心感と居場所を提供できる人になりたいです」
駄菓子屋のおばあちゃんといえば、そこにいるだけでほっとできるような存在。用事がなくても顔を出せて、ちょっと話をして帰ることもできる。そんな関係性を思い描いているそうです。
もちろん、まだ慣れないことや戸惑うこともあります。それでも、学生たちからパワーをもらいながら、自分自身も「頑張ってみよう」と前を向いています。
「失敗はないから」
代表からかけられた言葉は、今度は船戸さん自身が新しいことに挑戦するための支えになっているのかもしれません。
完成した場所ではなく、地域と一緒につくる場所
取材に訪れた店内は、オープンして間もないこともあり、まだ店内のレイアウトに余白を感じました。そして、その余白にこそ伊勢崎店の狙いがあるそう。「私たちが完成させた場所を提供するのではなく、地域の人と創り上げていきたい」船戸さんは話します。
ここに本棚があったらどうだろう。訪れた人が何かメッセージを受け取れるような本を置いてみたい。黒板があるのもいいかもしれない。学校の食堂のように、誰もが自然に集まれる場所。そして、訪れた人が元気やエネルギーを蓄えて帰れる場所にしたいと、これからの構想を語ってくれました。まだ、これから何にでもなれる。いまの伊勢崎店はそう思わせてくれる場所でした。
営業の合間に立ち寄る人、学校帰りの学生、親子連れ、夫婦、そして一人でふらっと訪れる人。それぞれが思い思いに過ごしながら、いつの間にか会話が生まれ、ゆるやかなつながりができていく。そんな場所になっていくことを目指しています。
だがしひびのば伊勢崎店は、これから地域の人たちと一緒に育っていく場所。お菓子を買いに行くのはもちろん、パンを買ったり、誰かとおしゃべりしたり、ちょっとひと息ついたり。特別な用事がなくても、ふらっと立ち寄れる場所が近くにあったら、日々の暮らしが少し楽しくなるかもしれません。これからどんな人が集まり、どんな場所になっていくのか。地域と一緒につくり上げていく、だがしひびのば伊勢崎店のこれからが楽しみです。
★店舗情報★
店名:だがしひびのば 伊勢崎店
住所:伊勢崎市田部井町3丁目166
営業時間:11:00~17:00
定休日:日・月・祝日
※最新の営業情報は、公式Instagramなどでご確認ください。
取材日:2026年10月 市民ライター/Hoshimö
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