経営者の輪Vol.373 山水食堂のご店主 髙橋利明さん

経営者の輪Vol.373 山水食堂のご店主である髙橋利明さん

今回、お話を伺うのは、山水食堂のご店主である髙橋利明さん。高校時代にインターハイで3位に輝いた水球の話、都内での料理修行のこと、ご家族経営の良さついてお尋ねしました。

プロフィール

髙橋 利明(たかはし としあき)さん

伊勢崎市出身

伊勢崎市在住

高校時代の水球で学んだ諦めない心

熱々トロトロのとまと煮込みうどんが絶品の山水食堂。同店を57年前に創業したのは、髙橋さんのおじいさま。当時はこの辺では珍しいスナックとしてオープンしたそうです。それをすぐにお父さまが、そばうどんを中心に宴会まで対応できるスタイルに変更。小さい頃からお父さまが働く姿を間近で見ていた髙橋さんは、小学生のときには「将来は料理人になって店を継ごう」と考えていたそうです。

 

その小学生時代から中学生まで夢中になっていたのが水泳。恵まれた体を存分に生かし、個人メドレーの選手として活躍していました。ところが「自分の思うところまで達することができなかった」と髙橋さん。水泳選手としての限界を感じるものの、何かしらの形で水泳に関わりたいと言う思いがありました。

 

こうして前橋商業高校入学後、門を叩いたのが水球部です。前橋商業の水球部と言えば、全国的に見ても強豪中の強豪。 2年上には後に日本代表となった志賀諭さんが、4つ下にはポセイドンジャパンのメンバーとして2度のオリンピックを経験し、日本人で初めてフランスリーグでプレーした志賀光明さんがいらっしゃいます。そして監督は、東京オリンピックの水球女子で監督を務めた本宮万記弘先生。このスゴイ環境の中に飛び込んだ同級生は、髙橋さんを含めた4人。2人がジュニアからの経験者で、髙橋さんともう1人は水泳の経験はあるものの、水球は初めてでした。

 

水の中の格闘技と言われる水球は、とにかく激しいスポーツ。当然、練習も厳しいものでした。学校があるときでも1週間のうち、6日は合宿。合宿所に寝泊まりし、学校に通いながら朝昼晩ととにかく泳ぎ続けました。その甲斐あって、インターハイで3位と言う成績を残すのです。日本一を本気で目指すそのために限界まで挑戦することが当たり前だった3年間を通じて、諦めない心を学びました。

 

これは後に、板前としての修行時代でも大いに役立ち、ほかの人は音を上げてしまうようなことでも辛いと思わなかったそうです。

東京の割烹店で16年間に及ぶ修業を経験

高校卒業後は、東京にある辻調理師専門学校に入学。小さいころからお料理を教わり魚をおろすことまでできたという髙橋さんですが、入学後は包丁の握り方やとぎ方から勉強したそうです。学校では日本料理を専攻。卒業と同時に都内の懐石・割烹料理店に入店します。その後、親方のつながりで、日本橋、銀座、青山、新宿など、さまざまなお店で腕を磨きました。

 

「濃い修業時代だった」と語る髙橋さん。技術的なことはもちろん、食材の組み合わせ方や器の選び方など、さまざまな方面から道を極めていきました。学んだのは、お料理だけではありません。人付き合いもそのひとつ。厳しい先輩を見ては「後輩を大切に、自分がされてイヤなことは絶対にしない」と心に決めて接したそう。

 

経験したお店は、厨房と客席が離れているケースがほとんどでしたが、最後に在籍したお店はカウンターがあり、自分が腕を振ったお料理の感想をダイレクトに聞くことができたそう。このことは大きなやりがいにつながりました。

 

 

そんな時、祖父母が相次いで他界。これをきっかけに16年過ごした東京から群馬に戻り、小さい頃からの夢であった山水食堂に入ることにしたのです。

 

お酒やスイーツと新たなおいしさも

山水食堂の「とまと煮込みうどん」は、髙橋さんが専門学校に進学する前から人気のメニュー。5個分の完熟トマトをたっぷり使った濃厚なスープに、コシのある自家製麺がよく絡みます。都内で腕を磨いて戻った髙橋さんが改めて口にすると、今まではおいしくいただいていたスープの、独特の匂いが気になり始めました。

 

「究極の引き算を重ねた最後に、本当に必要なものをプラスする」という手法で、より洗練されたおいしさを追求。自分でも納得の臭みのない、まろやかなスープを作り上げました。「やはり、おいしいと言ってくれるお客さまの声は、何よりのやりがい」と笑顔を見せます。

 

今は、ご両親と髙橋さんでお店を運営。家族で携わることについて「よくも悪くも意見を素直に言い合えるところ」と髙橋さん。商品の開発については、お父さまとお互いの意見を忌憚なく交わし合います。

 

「雇い主と従業員の立場では言えないようなことも言える分、他人なら一歩くところや言い方を考えるところも、親子となればタガが外れてしまう。一度意見がぶつかると激しさを増してしまうこともあって」と苦笑。お互い、お客さまに究極のおいしさを提供したいという思いは一緒です。それだけ真剣に向き合っている、ということですね!

 

メニューを見ると麺類が目につきますが、実はここにはない裏メニューもたくさんあるのだそう。そして、その裏メニューにこそ、髙橋さんが16年かけて培った技を堪能できるものがたくさんあるのだとか。どんなものがいただけるのか、ワクワクします。

 

宴会料理も好評。予算を伝えると、髙橋さんが好みを細かく聞きながら、旬のものを上手にコーディネート。フグ、ハモ、スッポンなど、他店ではいただけないようなものが並ぶこともあります。

 

実は、髙橋さんはケーキ作りも得意。新宿での修行時代、親方の奥様がドイツ人だったことからドイツ風のドッシリとしたパウンドケーキはかなり自信があるそう。また、お酒が好きで、酒蔵巡りをしては良いお酒を仕入れているので、珍しい銘柄がそろっています。

トータルでおいしいものを提供したいと言う髙橋さん。洋風メニューとの組み合わせも勉強中。これからは、珍しい銘柄のお酒に盃を傾けながら、同店ならではの新しい味わいを楽しめる機会がさらに増えていきそうです。

企業情報

山水食堂

◆住所/伊勢崎市上植木本町2753

◆TEL/0270-25-6202

◆創業/1967年

◆営業時間/11:00~14:30、17:00~20:00

◆休日/月曜、第2・4火曜

◆席数/32席+宴会場(30人まで)

◆駐車場/8台

◆業務内容/飲食業




取材日 2024年10月



応援します商売人!
今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ!

あのお店・会社のあの人を連載で御紹介します。
アイマップでは連載企画として、「応援します商売人!今こそフロンティアスピリッツを発揮せよ」と称し地域の企業人・オーナーさん達をご紹介していきます。 また次の方は、ご紹介を頂くという経営者の輪方式をとらせて頂きます(笑) この企画を通じて、少しでも地域の皆さんに地元のお店や企業、そしてそこで働く人達を知って頂ければ と思っています。またそれが僅かでも売上増やビジネスチャンスに繋がれば幸です。

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